それによると、調査地の周辺(約2キロ)に棲息しているカメは、多く見積もって数百のレベルだろうということである。 3000というのは、やはりあり得ない数字なのであった。
「かめライフ」から「和亀保護の会」へ会の名称や組織を改めた際、今までの科学的とはいえない手法についても深く自己反省し、真にカメの保護を行うには何をすべきなのかということが議論された。
「保護」という言葉を掲げる以上、カメの棲息数を減少させるわけにはいかない。カメの数を維持、そして増加させるためには川の環境をよくするための活動が行われなくてはならないが、実際の棲息数もハッキリしないのでは、行った活動が有効であるかそうでないかもわからない。例えば、「川の清掃」というと普通は保護につながると考えられるが、やり方によっては中洲を壊すなどして棲息環境を悪化させることもあり得る。よいことをしているつもりで結果的にはカメのためにならないという状況も考えられる。しかし正確な棲息数を把握していれば、カメの数の変化(増加や減少)によって活動の成功や失敗を知ることができ、失敗なら活動のやり方をいち早く修正することもできるのである。
イメージだけで行われた「保護」は傲慢に流れ、自己満足に終わることが多々ある。
私たちは実質的な「保護」をめざして、正確な数字を出していきたいと考えた。
つまり、誰が見てもはっきりと個体識別できる「ナンバリング」を地道にやっていくことに決めたのである。
さて、ナンバリングすることによって信頼できる数字を出すことは、公の場で力を持つものである。感情論や信頼性に欠けるデータでは、税金を使って奉仕するお役所を動かすことはできない。在来種のカメの窮状を訴え力添えを願うには、何よりも信頼できるデータの蓄積とその公表が有効だろう。これからは研究発表の場でデータを公表するだけでなく、川の環境保全のためにも、行政にも積極的にアピールしていきたいと考えている。
もう一つ、ナンバリングは私たちのやる気にもつながるという事実も紹介しておきたい。
2003.10.19、甲板がひび割れたメスのクサガメを捕獲した。
多量の出血があり弱っていたが、私たちにはなす術がなくそのまま放流した。
ところが翌年、傷が癒えて元気になった彼女を再捕獲し、21番の穴をあけた。
川では相変わらず傷を負ったカメを何度も発見するが、
番号のおかげで彼女を見間違うことはない。
その後彼女は調査をすれば2回に1度は顔を見せてくれるようになった。
冬眠前もさほど体重の減少もなく元気な姿を見せてくれた。
2004年12月19日
彼女が元気でまた来年もたくさん卵を産めるように、その卵が孵化して無事成長するように、私たちの保護・調査活動にも力が入るのである。
(文責:西堀智子) |